観てきた。KAAT × 高山明 / Port B『ワーグナー・プロジェクト』 ―「ニュルンベルクのマイスタージンガー」―

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超大型の台風が来ているらしい。天気図で見るとまだ随分遠くにいるはずなのに、すでに風が強い。台風21号はランという名前、台風委員会というところが予め用意しておいた名前から、それぞれの台風には何かしらの名前がつけられることになっているのだそうな。ラン、Run、蘭、乱?正解は「嵐」。そういうわけで嵐以外の何者でもないというようなこの台風が近づくなか、床がビチャビチャに濡れた電車に乗ってKAAT神奈川芸術劇場に向かっている。PortBの「ワーグナー・プロジェクト」見れるとしたら今日しかなくて、しかたがない。

台風21号の影響により、本日22日(日)から23日(月)にかけて、大雨や強風が予想されております。大雨や強風に伴い、安全運行確保のため東急線の一部または全線において、運転見合わせや運転速度を落とした運行になる場合があり、列車内および駅の混雑によっては通常よりも所要時間が多くかかります。お客さまにはご迷惑をお掛けしますが、お時間に余裕をもってお出掛けくださいますようお願いいたします。

横浜駅で車内はガラ空きになる。日本大通り駅で下車する。エスカレーターに乗って外まで出てみるとこちらの方が雨足が弱く、風もそれほど吹いていない。KAATのエントランスに入ると階段下のベンチに一人座っている人がいて入り口の自動ドアに警備員がいた以外には誰もおらず心配になった。五階に上がって当日券を買って、リストバンドをつけて中に入った。鉄パイプ、単管というのだったか、単管、短歌、今短歌のワークショップが開催されている。単管、短歌、タイカレー。タイカレーが売ってたので買って食った。美味いし辛い。

出入りが自由なので、ちょっと一休みと思って大ホールから出ると3階あたりのベンチで、先ほどまで別のワークショップをしていた人が誰かと話をしている。出入りが自由で、ホールの中も自由に歩き回れる。それで出演者、と言っていいかわからないけど、も外に出たりして、そうなるとこの場合の「劇場」はどこからどこまでということになるのだろう。演じる役や決められた台詞の無い出演者たちは、ホールの外にいても、変わらず出演者のままに見える。普通の演劇なら、舞台の外で見かける出演者は○○役の××さん、というように芝居の中の人物とは明確に別人と分かるのだけど、「ワーグナー・プロジェクト」ではそこが曖昧になっている。雨の中信号待ちをしている人は、この劇の観客ではないだろうか。実際にはそうでないとしても。受付の人たちは観客、出演者だろうか。観客の中にも出演者と同じように熱心にメモを取る人がいた。彼らは完全に「観客」だとは言い切れないような感覚。他の観客をも出演者の一部のように見てしまう私。

あるいは登場人物と呼べば良いだろうか。

周りでの会話から不意に思いもしない人間関係が明らかになることもある。ライブをする人たちは、サイファーと言ったか、彼らがやって来て出番を待っている。演出家が彼らに近づき段取りを説明する。誰か2人の人がサイファーについて話している。新橋をはじめ各地で毎週フリースタイルラップやMCバトルなどをしている人たちがいて、今日ここに来ているサイファーたちはそれぞれ別のところから来ているとかなんとか。

ワークショップが続く中、音楽が流れなし崩し的にライブに移行していくその様子が面白かった。準備で動き回るスタッフたち。カメラマン。MCバトルは実際に見ると改めて即興であんな風に言葉を繰り出していくことが出来る彼らをすごいと思ったし、日々ストリートで、本物のストリートというか道端で彼らが技術を磨いているという事、今まで見たこともないそれらの集まりの様子がイメージされて何というか凄い。演出助手?の方が道端でラップをしている彼らに声をかけて、今日のこの舞台に出演してもらったのだという。なんかそんな会話がちょっと聞こえた。

これは出来るだけ長い時間をとって、ホールをうろうろしながら見るのが良いと思う。そうすることでこの場所の登場人物、出演者と観客、それぞれの配置や動き、関係などが見えてくる時があって、それらこの場所で浮かび上がるドラマや背景といったこと全てが、この上演のプロセスの一部なのだと思うから。それはホールの中だけの出来事に限らないし、実際ライブ途中で外に出た時、そこでワークショップの続きが行われているらしい様子も見えた、観客一人一人の中でそういった何かが形をとって浮かび上がる限り、この舞台の上演空間はあの大ホールを超えて広がっていくことが出来る。ということを考えた。

ところで台風は今の所心配したほどひどくはなくて、もしや帰れなくなるかもと思っていたけど、無事家に着きそう。

KAATの外壁に掲示されていた秋冬の上演予定に『アダムス・ファミリー』や『三月の5日間』とかあって気になったけれど、一番「ほおぉ」と思ったのは12/22-24に上演される『舞台 文豪ストレイドッグス』だった。クリスマス公演か。