読書感想文 ロベルト・ボラーニョ『チリ夜想曲』

まだ読み終えていないが、ここまで段落なしでひとつなぎになった神父の回想が延々と続いている。出来事から出来事へ、場所や時間がスムーズに変化して、気がつくと別の話題に移っている。話の流れの中で何人もの人物が突然現れるのだが、それが突然のことには見えず、気がつくといつの間にかそこにいたかのようだ。文芸評論家のフェアウェルが現れ、彼の農場でのパーティーにはパブロ・ネルーダが来ている。フェアウェルの周囲には多くの作家がいて、後日フェアウェルとサルバドール・レイエスの家にいた時にはエルンスト・ユンガーとレイエスの出会いのエピソードが語られる。それは同時にある無名のグアテマラ人画家についてのエピソードでもある。このグアテマラ人、いつの間にか現れて窓辺に立っている幽霊のような人物で、ほとんど言葉も話さないのに、しばらくの間このエピソードの中心人物になる。その後に粗末なレストランでフェアウェルが語った靴屋の話、その話への移行のさりげなさ。窓辺に見えるパリの景色から、チリの夜、レストランを経由してオーストリア=ハンガリー帝国へ、そこには靴屋と皇帝と<英雄たちの丘>があり、おとぎ話のような靴屋の物語をロシアの戦車が横切って行くと、その先には靴屋の遺骸があった。すると場面は再びレストランへ、チリへ、影を増して恐怖を孕んだサンティアゴへと戻ってくる。教皇たちがその影を取り除いてくれた。


読み終わった。それはともかく。


ラクロワ神父は2人の男、オデイム氏とオイド氏に出会う。神父は彼らの依頼でヨーロッパに行き、そこでは鷹と鳩との戦いが繰り広げられていた。イタリアで、フランスで、ベルギーで、スペインで。元はと言えば、平和の使者であるところの鳩が、教会の建物や尖塔に糞を雨あられと降らせ、これを老朽化させ破壊しようと(意図してではないにせよ)していたことが発端だった。鳩の糞害に対抗するためヨーロッパの神父たちは、鷹を使って鳩らを駆除することにした。司祭服に身を包み、左手には籠手をつけ、鷹匠となった神父たち。鳩たちを恐怖に陥れた何羽もの鷹が紹介される。

「トルコ」はイタリア、ピストイアにある永遠の苦しみの聖母マリア教会を守護している。鷹匠のピエトロ神父が口笛を吹き、腕を振るとピストイアの上空どこからともなくトルコが舞い降りてくるのだ。トリノ、救済の聖ペテロ教会の鷹は「オテロ」、鷹匠はアンジェロ神父。トリノには南部に名前の知られていないもう1羽の鷹が存在し、オテロ共々周辺の鳩を狩っている。オテロと無名の鷹は鳩狩りの能力をお互いに競い合っているのかもしれず、いつか直接対決の日が来るかもしれないとアンジェロ神父は考えていた。フランス、ストラスブールには青みがかった黒い羽の「クセノポン」。教会のパイプオルガンの金色のパイプの頂点に立ち会衆をじっと眺めていた。アヴィニヨンの「タ・ギョール」、正午の聖母マリア教会を守る獰猛な鷹で、鳩だけでなくムクドリまでも殺戮していた。雲の中へと飛び立って行き、稲妻のように急降下し、南仏の空を赤く染める。スペインのブルゴスにはいわば引退した鷹匠であるアントニオ神父と老いた古鷹の「ロドリゴ」がいた。ロドリゴはすでに鳩狩りをしなくなっていて女中が市場で買ってくる肉を食べて暮らしていた。ラクロワ神父はロドリゴを中庭に連れ出し「飛び立て」と声をかけた。ロドリゴが「金属でできた羽根の音を立て」飛び立つと、強風が吹き、彼が飛び去った後には何羽もの鳩の死骸が散らばっていた。ロドリゴは帰ってこなかった。ベルギーのナミュール、森の聖母マリア教会にはシャルル神父と「ロニー」。ロニーについては名前以外のことは分からない。森の中で神父とのどかに暮らしているのだろう。最後はフランス、サン=カンタンの「フィエヴル」。空に飛び立った直後の鳩を一瞬で仕留め、そのまま教会の尖塔を目指して飛んでゆく。クレー射撃のような感じだろうか。

トルコ
オテロ
クセノポン
タ・ギョール
ロドリゴ
ロニー
フィエヴル

教会に糞をする鳩、それを狩り教会を保護する鷹と神父、だけど鳩は三位一体の精霊を象徴する生物で、という事で彼らの関係は複雑に入り組んでいる。

その後ラクロワ神父はチリに帰り、サルバドール・アジェンデが大統領になり、アウグスト・ピノチェトがクーデターを起こし、ラクロワ神父はピノチェトラにマルクス主義の講義を行った。この講義を依頼してきたのも、オデイム氏とオイド氏だった。

疲れたのでここまで。